相続税対策

【借地権の判例】〜借地利用の主目的が建物利用にないと判断された編

 

借地権があると認められるためには、前回お話しした借地上の構造物が「建物」と認められるかどうかの他に、借地利用の主目的が建物利用にあるかどうかという点も問題となります。

前回の判例についてはこちら

→相続税評価における建物の3つの認定基準とは?過去の判例と共に詳しく解説!(http://retax.biz/syakutiken-hanrei1/)

ここでは前回同様いくつかの判例を紹介しつつ、解説します。なお、ここで紹介する事案は全て国税不服審判所で採決された、相続税申告に関係する事案ではありません。裁判所が借地権の有無に関して判断を下した「判例」です。

建物所有を目的とする賃貸借には当たらないとされた判例

借地上にゴルフ練習場の経営に必要な事務所があっても、建物所有を目的とする賃貸借には当たらないとされた事例をご紹介します。

これは、ゴルフ練習場として使用する目的で締結された土地の賃貸借契約に旧借地法が適用されるかが争われた事案です。

尚、最高裁判所は以下の理由で旧借地法の否定し、借地権ではないとしています。

最高裁判所の判例

・本件の場合、ゴルフ練習場として使用する目的で土地の賃貸借が開始されたが、当初からその土地上にゴルフ練習場の経営に必要な事務所用等の建物を築造し、所有することが予想されていた。しかし特段の事情のない限りその土地の賃貸借は「建物の所有を目的とする」賃貸借ということはできない。

・「建物の所有を目的とする」とは、借地人の借地使用の主たる目的がその土地上に建物を築造し、これを所有することにある場合を指す。また、借地人が地上に建物を築造し所有しようとする場合であっても、それが借地使用の主たる目的でなく、その従たる目的にすぎない時はこれに該当しない。

 

土地賃貸借契約に借地法の適用があるとされた判例

これは、自動車教習所の敷地の賃貸借契約について借地法の適用の有無が争われた事例です。ゴルフ練習場の事例と比較すると、建物敷地以外の部分が圧倒的に多いという点で状況は類似していますが、この事件では裁判所は借地法の適用を認めています

そのため、自動車教習所の敷地を安易にゴルフ場の敷地と同様に考え、借地法の適用がないものと断定的に考えるのは危険であることを戒める意味がある判例であると実務上言われています。

裁判所が借地法の適用を認めた理由

裁判所が借地法の適用を認めた理由として以下のものが挙げられています。

①契約書に「普通建物所有目的」という記載がある
②契約段階から自動車教習所に必要な建物の存在が予定されていた

借地法の適用の有無は、土地賃貸借契約の主目的が建物所有にあるかどうかによって判断されるというのが判例及び通説の考え方です。

しかし、その判断は個々の事案によって困難な問題となることが多く、目的が自動車教習の場合には個別の条件によるところもありますが、借地権の存在を認めた裁判例、認めなかった裁判例(いずれも最高裁判所のもの)があります。

この事案では、①契約書の記載と②自動車教習所運営の必要性という2つがポイントとなっており、当事者の意思を重視するとした意見を裁判所が述べたものとなっています。

建物所有に通常必要と認められる範囲を超えていると判断された判例

建物所有目的で借りた土地の一部(現況は家庭菜園として利用されている)について、建物所有に通常必要と認められる範囲を超えているとして借地法の適用を否定した判例も過去にはありました。

この事案では、建物所有目的で土地の賃貸借契約が締結されていましたが、建物の面積に対して土地の面積が広すぎる等の現状から、建物所有について通常必要と客観的に認められる範囲を超える部分には借地法が適用されないと判示されたものです

事案の詳細は筆者の想像にすぎませんが、恐らく、戸建住宅所有目的としていた賃貸借契約で、地主が好意等の事情で家庭菜園用地としてかなり広い土地をあわせて貸したのでしょう。

この事案もどこまでが通常必要と客観的に認められる範囲なのか疑問ですが、裁判所の考え方では「借地法は土地の有効利用を図ることも一つの目的としていることから、それが適用され借地権として保護を受けるのは、借地上の建物の所有ないし利用に必要な範囲に限定される。ただし、その範囲は建物の種類・用途等によって異なる」とされており、なお分かりにくくなっています。

相続税評価上の留意点

このように、例えば自動車教習所設置目的の土地賃貸借契約に関して、最高裁判所の判例の中にも借地権を認めたものと認めなかったものとが混在しています。

上の3つの事例から見ると、この違いは契約書の記載内容に「建物所有目的」と記載されているかどうかによると考えることもできますが、3つ目の事案では土地全体について建物所有目的で1つの土地賃貸借契約が締結されていても借地権の存在を一部否定する裁判例も出されています。具体的な事案の内容によって判断結果が左右されることが多く、画一的なとらえ方は難しいものと思われます。

では、どのように判断するかというと、専門的な知識を有する人が実際に現地を見て、契約書類や地代の収受状況を確認して、その上で判断するということになるでしょう。

筆者が実際に相談を受けた事案では、青空駐車場用地としてかなり広い土地を貸していて、その一部に建物として登記もされている管理事務所を建てていたというケースがありました。相続人は一体として借地権がついた土地であるからその所有権は底地として評価すべきと考え、そのように評価して相続税の申告をしたのですが、国税庁(国税不服審判所ではありません)からの通知では「土地の面積に対して建物が小さすぎる」として、大部分否認を受けたものでした。

実際必要書類を全て確認の上、現地に行ってみたのですが、2,000㎡程度の青空駐車場に対し、平家建の木造事務所が入口にぽつんと建っているだけ、その面積も15㎡程度と非常に小さく、これは否認されてしまうだろうと思った経験があります。

借地権の存否は専門家でもこのように現地を見なければ判断が妥当かどうか見分けられないケースがありますから、少しでも不安であれば税理士・弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。