相続税対策

相続税評価における建物の3つの認定基準とは?過去の判例と共に詳しく解説!

 

相続税申告における借地権の評価額は

「更地としての価格×借地権割合」

底地の評価額は

「更地としての価格×(1-借地権割合)」で評価されます。

相続財産が借地権であっても底地であっても、借地権がついていると認められれば評価額は更地の価格に比べてかなり下がりますので、相続税の節税を考える上では借地権付の土地は必ずそれを前提に評価すべきです

しかし、借地権とは「建物の所有を目的とする土地の賃借権又は地上権」と法律上規定されていますから、建物の所有を前提としていなければ相続税評価上も借地権があるとは認められません

そこでここでは、相続税評価を目的とした建物と認定されるためにはどのような要件が必要になるのか、事案と判例を紹介しながら見ていきます

今回の事案と判例の紹介

この事案も、納税者である相続人と担当国税庁とが借地権があるかどうかについて争い、最終的に国税不服審判所で裁決が下された事案です。

被相続人が賃借人に対し、おみこしの収納用建物を建設するために土地を貸していたものです。賃貸されている土地の半分に、お祭り等で使うおみこし置場用の建築物が建っていたというものです。なお、裁決事案ではこのおみこし置場は、「鉄パイプにトタンを張ったもの」であると書かれていました。

今回の事案ではおみこし置場の建築物が「建物」と言えるかどうかが争点となりました。

建物であれば相続税評価上借地権ありとみなされ、先に書いたようにこの土地の評価額は更地の評価額と比較して下がりますが、建物でなければ更地の評価額となり、借地権または底地の場合に比較して評価額はかなり高くなります。

相続人の主張

相続人は当然、本件土地の賃貸借契約は、建物の所有を目的とする賃貸借であるから土地の上には借地権が存在しているので、本件土地は借地権の目的となっている貸宅地として評価すべきであると主張しました。

担当国税庁の主張

担当国税庁は、本件建築物は鉄パイプにトタンを張ったものであり、取り壊しが容易で移築・移動が可能なものであって、借地借家法が適用される建物とは認められないと主張しました。担当国税庁の結論としては、本件のようなおみこし置場は「建物」ではないので、借地権は存在しない、よって更地として評価すべきであるというものです。

国税不服審判所の判断〜判例はどうなった?

国税不服裁判所は以下のとおり判断して、本件おみこし置場は「建物」にあたらないため借地権の存在は認められないと相続人の主張を退けています。

本件建築物は、屋根及び外壁はトタンを張ったものであり、基礎工事及び内部の造作は一切なされておらず、移築可能で簡易な建築物である。

本件建築物について不動産登記はされていないし、固定資産税等も課税されていない。

よって、『本件土地の上に借地権が存在するとは認められず本件土地は自用地として評価し、その価額が本件相続にかかる相続税の課税価格に算入されるべきである。』との判決が出ました。

相続税評価における建物の認定基準〜不動産登記規則の解説

今回の判例の国税不服審判所の理由付けを見ると、建物かどうかの判断基準は上記で下線を引いた部分のようです。

これは、不動産登記規則や不動産登記事務取扱手続準則というルールにおおむね従っていると思われますので、そちらの規定を見ていきましょう。

不動産登記規則では、建物であるかどうかの認定基準について、以下のとおり記載されています。

「建物とは、屋根及び周壁またはこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用地に供し得る状態にあるものをいう(不動産登記規則第111条)」

また、不動産登記事務取扱手続準則第77条では、建物とするもの及び建物としないものの具体例が挙げられています。

尚、相続税そのものの話ではありませんが、不動産登記法は上の条件を満たした建築物でなければ不動産登記の主たる建物としての登記は認めていません。

以上の規定や、裁判所が過去に下した判例より見ると、建物と判定されるかどうかは、以下の3つの条件をすべて満たしていれば建物、そうでなければ建物ではないとされるようです。

相続税評価における建物の認定基準1. 『外気分断性』

屋根や外壁、またはこれと同等のもので雨をしのぎ、風を遮断することができることで、室内を外気と分断することができること。

相続税評価における建物の認定基準2. 『用途性』

屋根や外壁等の外部構造で区画された内部の空間には居住や事務等の一定の用途に供することが可能な生活空間(人や貨物がとどまることが可能な場所)が形成されていること。

相続税評価における建物の認定基準3. 『土地への定着性』

定着性とは、土地に付着されていること、かつその土地に永続的に付着された状態において使用されることを意味します。

キャンピングカーは土地にくっついておらず簡単に移動できるから建物ではありませんが、コテージは土台や基礎で土地に付着しており、動かすことができないから建物だということです。つまり、物理的に見て土地に固定的に付着していること、社会通念上その土地に永続的に付着され使用されることを意味します。

以上の3つの要件を全て備えていれば建物であり、1つでも備えていなければ建物とは法律上や税務上認められないというわけです。

 

相続税評価における建物の3つの認定基準とは?過去の判例と共に詳しく解説!まとめ!

冒頭の事案の現地を実際に見たわけではありませんが、恐らくおみこし置場はちょっと丈夫なテントみたいなものだったのでしょう。公園等にたまにある防災備蓄倉庫のような、スーパーハウスのようなというとイメージがわきやすいでしょうか。

こういったものは土地に基礎や土台で固定されているわけではなく、簡単に移動や撤去ができますからこの事案では建物とは認められなかったと思われます。

借地権があるかどうかはその土地の上の構造物が建物かどうかで判断されますから、以下の3点をきちんと確認しましょう。

(1)借地上に建物があっても、その建物には基礎がなく撤去が容易なものである場合、借地権は存在しないと判定された例があること

(2)借地上に建物が存在すると相続人が主張しても、それだけで無条件に借地権があると判定されるわけではなく、法律上「建物」であると認められる3要件が必要になること

(3)建物と言えるためには、独立して登記のできるものでなければならないこと