相続税対策

【2019年版】相続税申告の裏話〜更正の請求による還付は通りにくい傾向が!?

 

筆者は税理士と協力し、不動産の鑑定評価を通じて相続財産を評価することで多くの相続税申告額の減額、還付を受けてきました。

その実務を通じて税理士の方々から聞いたこと、実務の感触をお話しします。

相続税財産額の申告は通りやすく、更正請求による還付は通りにくい傾向

不動産鑑定評価書を使った相続税の減額を税務署に申告する際、タイミングは2つあります。
1つ目は相続発生時点から10カ月の相続税申告期間内に不動産鑑定評価書を取得し、その評価額で相続税を申告することです。
2つ目は一度相続税を納めた後、不動産鑑定評価書を取得し、当初申告時の財産評価額は過大であったので更正の請求をしますということで還付申請を行うことです。

あくまで筆者の個人的な感触としてお聞きいただきたいのですが、前者は比較的申告が通りやすく、後者は申請がやや通りにくいのかなと感じています。

税務署の立場で言うと、財産評価基本通達によらず、不動産鑑定評価書で評価した価格での申告は実はそれなりに嫌だそうです。

その理由は以下のようなものでした。

  1. 相続税路線価も不動産鑑定士の評価を元に設定している
  2. 財産評価基本通達に従えばかなり定型的に処理できる相続税申告の事務処理が、不動産鑑定士によって書式やレイアウトが異なる不動産鑑定評価書を読み込まなければならないので事務処理負担が増える
  3. 仮に不動産鑑定評価書による相続税申告を全面的に認めると、不動産鑑定士に依頼できる余裕のある納税者と、余裕のない納税者の間で課税上の不平等が生じてしまう
    (不動産鑑定評価書に対する報酬はその鑑定士や土地の状況等にもよりますがおおむね1件当たり20万円から)

不動産鑑定士である私が言うのもなんですが、税務署の言い分も一理ある部分があります。
③は確かにその通りですし、②は日々不動産鑑定評価書を作成している私でも、他の鑑定士が書いた評価書のコピーをもらった場合一見して分かりにくい評価書に悩まされることもあります。

ただし、財産評価基本通達による評価では必ずしも相続財産の価格を適切に評価できるわけではないというのも実際の問題としてあるわけで、そのため税理士経由で不動産鑑定士に依頼して不動産鑑定評価書を添付した相続税申告ということが広く行われているわけですし、鑑定評価書を利用した申告が通っているケースが大半です。
(実際、画地規模の大きい宅地の評価が財産評価基本通達に定められていますが、筆者が実際の取引を分析したところ、100㎡程度の標準的な宅地と比較して2,000㎡を超える土地の価格は70%どころの価値率ではなくもっと低いのではないかというデータが得られることは多々あります)

しかし、一度納めた相続税を還付請求する場合は、やはり国税庁もかなり身構える傾向があります。
国税庁の立場からすれば一度国庫に納められたお金を引き出した上で返すわけですから、事務処理上もより大変なものになるとは想像できますし、仮に日本中で同時に同じような申告が行われたとするならば、国の予算も混乱することが予想されます。

これ以上詳しいことはお話しできませんが(笑)、以上を考えると相続税申告の際は、事前に十分な検討を税理士の方と行う等して、必要があれば相続税申告期限までに余裕をもって不動産鑑定士に依頼し、当初から不動産鑑定評価書による申告を行った方が良いと考えられます。

不動産鑑定士の評価に関するリスク

不動産鑑定士の作成する鑑定評価書について、税務署は基本的に信頼して相続税審査をしてくれる傾向がありますが、上記のとおり必ず鑑定評価書による申告が通るわけではありません。
実際、私道の評価に関する記事でも紹介した事案では、鑑定評価書では私道はゼロ円と評価されていましたが、国税不服審判所までもつれて争った結果、その事案の私道は宅地の30%の水準で評価するのが妥当として不動産鑑定評価書による評価は覆されました。

※もっとも、不動産鑑定評価書が論理的に誤っていたというわけではありません。不動産鑑定評価書では余程の事情がない限り、私道部分は0円で、その価値は宅地部分に含まれると考えますので。

仮にこの場合でも、不動産鑑定士に支払った鑑定報酬が返還されるわけではありません。
不動産鑑定士の報酬は「鑑定評価書作成作業に対する報酬」という意味合いが強く、成功報酬ではないからです。

相続税申告の際、鑑定評価書をとる場合はこの点を十分考慮した上で決断してください。

もちろん、複数の土地を相続した場合、ある土地については鑑定評価書による申請が通ったけれど、ある土地については通らなかったというようなケースもありますから一概には言えませんが。

このリスクを回避する方法として、事前に土地の概要を送り、この土地は減額の可能性がありますが、この土地は減額の可能性がありませんとはっきり言ってくれる鑑定士を選ぶようにする等するようにしましょう。

ついでの話

相続税に関してお話をしたついでに、土地にかかる税金としてもう一つ主なもの、固定資産税・都市計画税の減額可能性についてもお話をします。

結論から言いますと、固定資産税や都市計画税について不動産鑑定評価書を取得することで減額しようとしても、ほぼ100%認められることはありません。

その理由は以下のとおりです。

  1. 固定資産税・都市計画税は固定資産税路線価を元に評価された価格に課税されていますが、固定資産税路線価は公示価格水準の70%が基準となっており、80%を目安としている相続税路線価よりも最初から更に低い水準になっています。
  2. 相続税が一回しか課税されないものであり金額も大きくなる可能性が大きいのに対し、固定資産税・都市計画税は保有税であり、毎年課税されるものです。そしてその額は自治体によって異なりますが最大でも評価額の1.7%と高いものではありません。
  3. 地価が上昇している時期でも、固定資産税、都市計画税には負担調整措置と言って、昨年度から見て税負担額が一気に増加しないような措置が取られています。

以上から、固定資産税・都市計画税の減額は現実には非常に難しいですし、何年もかけて争ったとしても得られる減額効果は大きなものではありません。

まとめ

ここまで相続税申告の際の不動産の評価の原則、注意点をお話ししてきました。
相続税は金額も大きくなりがちですし、土地の評価方法について知らなかったがために負担しなくても良い多額の税金を払ってしまうことにもなりかねません。

大まかですがお話ししてきたことをご理解いただき、適切な負担額のみ負担するという結果につながる一助としていただければ幸いです。