相続税対策

【2019年版】広大地の評価とこれまでの改正を年代ごとに徹底解説!

 

※2019年8月更新

過去、相続税の申請時に土地の評価が問題となる場合、ほとんどが画地規模の大きい土地でした。面積が大きい分、相続税路線価をそのまま面積にかけて評価額を算出する方法では過大な評価額となってしまい、税額が大きくなってしまうのです。

実際に、現実の取引でも土地の面積が大きいほど㎡当たり、坪当たりの単価はマンション地や高度商業地を除いて低くなる傾向があります。その一方で、規模の大きい土地の評価は課税側と納税者側で意見が分かれ、国税不服審査の焦点となりやすい問題でもあります。

相続税の財産評価基準における規模の大きい土地の評価について、過去の制度と現在の制度について、基本を紹介します。

平成6年創設の広大地評価

相続税評価におけるいわゆる「広大地評価」は平成6年に新設された評価方法です。

平成6年時の制度では、評価の対象となる土地を区画割して販売することを前提とした開発想定図面を基にした考え方になっていました。

区画割をすると、区画割後の土地の全てが道路に接面しているようにしなければ建物の敷地として使えないため、道路の新設が必要になるケースが生じます。その際に新設すべき道路(潰れ地等と言います)の面積の割合を採用して、減価していたわけです。

しかし、実務上

①納税者側が作成した開発想定図面と、課税当局側の想定図面が異なり潰れ地割合について見解の相違が多く生じた

②平成初期のバブル崩壊による地価の下落と、制度上相続税路線価が引き上げられたことに伴い実際の取引価格を広大地評価額が上回る案件が多くなった

③この結果、物納等が多く発生した

という問題点がありました。そこで平成16年広大地評価が改正されます。

平成16年改正の広大地評価

このような問題が多く生じたため、平成16年に広大地評価は大きく改正されました。具体的には、以下の式で評価額を査定するようになったのです。

評価額=正面相続税路線価×広大地補正率×地積(※広大地補正率は、0.6-0.05×地積÷1,000㎡で算出。但し0.35が下限)

このように画一的な方法で規模の大きい土地の評価を行うようになったため、正面路線価と地積が分かればだれにでも広大地補正率を求められるという評価方法になりました。これによって時価と相続税評価額が逆転するケースも減少し、物納も少なくなったというメリットがありました。

しかしデメリットとして上記の算式では広大地に該当する土地は評価額は最低42.5%、最高65%の減額となり、ある土地が広大地に該当するかしないかで相続税評価額が大きく変動するという事態が生じます。そのため、今度は「広大地に該当するかどうか」という点が焦点となり、広大地評価を適用できる土地なのかという点が国税不服審査の多くの割合を占めることになりました。

広大地に該当するかしないかは、旧財産評価基本通達24-4(現在は削除)で、
『①その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地』かつ『②都市計画法第4条12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共共益的施設用地の負担が必要と認められるもの』とされていました。

また、『③大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものは除く』とも規定されており、かなりあいまいな定義がされていたのです。

③は、工場用地やマンション用地は区画割をしないため、開発道路を新設する必要が基本的にはなく、潰れ地は発生せず有効宅地面積は減少しないという考え方により設定された規定です。

そのため、たとえば基準容積率が300%の地域で、戸建分譲用地としてもマンション用地としても使えるような土地については、広大地評価を適用できるかどうかは実際の売買市場によって異なるため、それらの分析なしには判断できないというややこしい状況になってしまいました。

この調査には、不動産に関する専門的な知識が必要になるため税理士単独では判断が難しく、申告担当の税理士側からすると広大地地評価で申告した場合の否認による修正申告の手間や本税の増加、過少申告加算税や延滞税のリスクを回避するために、当初申告においては広大地評価を適用せず、後で更正請求を行うという事案や、当初申告を行った税理士とは別の税理士が更正請求をするといったケースが増加しました。

また、平成16年から平成20年まではいわゆるファンドバブルの時期で全国的には地価が上昇局面でしたから、特に三大都市圏では広大地に該当する土地の時価が広大地評価による相続税評価額を大きく上回るケースも多くなり、広大地以外の土地との課税の公平を図るために、この広大地評価方法は見直されることになりました。

平成29年改正の内容

平成29年の地積規模の大きな宅地の評価方法の改正の柱は2つあります。

1つ目は「適用要件を形式的に判断できるよう明確化(評価単位)すること」です。

これは、平成16年改正の広大地評価では適用できるかどうかの判断が難しく、税理士や課税当局の担当者だけでは判断が難しいというケースが多かったためそれを解消するためのものです。

具体的には、地積規模の大きな宅地とは三大都市圏においては500㎡以上の地積の宅地、それ以外の地域においては1,000㎡以上の地積の宅地を言い、次の①~③までのいずれかに該当するものを除きます。

  1. 市街化調整区域(但し宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域は除く)に所在する宅地
  2. 工業専用地域に所在する宅地
  3. 容積率が400%以上(東京都の特別区においては300%以上)の地域に所在する宅地

以上のとおり、ほぼ誰が見てもわかる適用要件となりました。

2つ目は「減額割合の減少」です。

平成16年の広大地評価では評価額と時価が特に大都市圏において乖離しているという状況が生まれていました。これを解消するための改正です。
具体的には、かつての財産評価基本通達24-4(前述)を廃止し、以下の算式による減額割合となりました。

規模格差補正率=(地積規模の大きな宅地の地積A×B+C)÷A×0.8

上の式のB、Cには地積規模の大きな宅地が所在する地域に応じ、次の表のとおりの補正率が入ります。

イ 三大都市圏に所在する宅地

ロ 三大都市圏以外に所在する宅地

これに奥行補正が加味されて広大地補正率が決定されます。旧来と比べてかなりわかりやすくなった制度と言えますが、詳しくは次以降の記事でお話しします。

【2019年版】広大地の評価とこれまでの改正を年代ごとに徹底解説!まとめ

かつての広大地評価は減額率が大きいために広大地に認定されるか否かが非常に大きなファクターとなっていました。また、広大地に認定されるための要件もあいまいでわかりづらいものでした。

平成29年改正ではこれを解消して少なくとも要件についてはかなりわかりやすくなっています。評価額の減額率は減少したとはいえ、規模の大きな宅地に該当するか否かで、相続税はかなり減額されますのでよく理解しておくべきです。