ここでは連結納税制度を活用した節税手法をご紹介します。
連結納税制度の概要
まず連結納税制度とはどのような制度かご案内します。連結納税制度とは、簡単に言うと親会社と子会社を1つの会社とみなして法人税を計算する方法です。例えば、会計上、親会社が100の黒字があって子会社に50の赤字がある場合、連結財務諸表上の利益は50になります。ただし、法人税は、原則的に単体での申告・納税となるため親会社は100の所得に対して約30の法人税がかかるのに対し子会社は赤字のため法人税が課せられません。従ってグループ全体での利益は50なのですが、法人税は30支払う必要があります。しかしこれが連結納税になると、親会社の黒字と子会社の赤字が相殺されて所得が50となるため、グループの法人税額は15となり、子会社の赤字をうまく活用することが可能となります。
ただし、連結納税制度は会社が自ら選択の適用の申請を行う必要があります。そのため、適用要件を満たしていても会社が承認申請をしない限りは適用を受けることはできません。ですから連結納税制度の適用を受ければ法人税を減額することができる場合でも、通常の法人税の申告をしてしまっているケースがあるのではないかと思われます。
連結納税の対象
それでは連結納税制度はどのようなグループ会社に適用できるのでしょうか。連結納税の対象となる子会社は、原則として親会社の100%子会社となります。ただし外国の会社は適用を受けることができませんのでご注意ください。なお、この場合の100%とは、その親会社が所有するほかの100%子会社を通じて所有する分も含めて計算します。連結納税制度の適用を受けようとする場合には、原則として子会社を100%子会社にする必要があります。
加えて、連結納税制度の適用を受けようとする場合には、原則として適用を受けようとする事業年度開始の日の6ヶ月前までに承認申請を行う必要があります。また、1度連結納税の承認を受けると特別な理由がない限り継続して連結納税制度を適用することとになります。
ただし、以下にも記載をしていますが、既存の企業グループが連結納税制度を採用しようとする場合にはいったん子会社の資産を時価評価する必要がある等、やや特殊な制度が多数存在するため、適用を受ける際には慎重に検討する必要があります。
以下では、簡単に連結納税制度のメリットとデメリットを簡単にまとめさせていただきました。
連結納税制度のメリット
-
- 親会社と子会社の所得を通算できる。
- (含み損がある場合)連結納税開始時に子会社の有する資産の含み損を計上できる。
- 連結法人間での資産譲渡益が繰り延べられる。
- 親会社が子会社から受け取った配当金の全額が益金不算入となる。
- 税額控除の適用が受けられなかった会社が適用を受けられるようになる。
連結納税制度のデメリット
- 連結納税制度の適用前に生じた子会社の欠損金が原則として繰り越せない。
- 原則として連結納税開始時に子会社の有する資産の含み益が計上される。
- 中小法人の軽減税率等の適用が受けられなくなる。
- 交際費の損金算入限度額が少なくなる。
- 1度連結納税の承認を受けると特別な理由がない限り継続して連結納税制度を適用しなければならない。
連結納税制度には、メリットだけではなく、デメリットもあります。そのため連結納税制度の適用を受けようとする場合には、有利・不利の判断を慎重に行う必要があります。
連結納税制度を検討すべき場合
それではメリットとデメリットを踏まえどのような場合に連結納税制度の導入を検討すべきでしょうか。次のいずれかに該当する場合には、連結納税制度の適用を受けることにより節税される可能性がありますので連結納税制度について検討しても良いかと思われます。
- グループ会社のうちに黒字の会社と赤字の会社がある場合には、損益通算により当期の法人税を節税することができます。
- グループ会社のうちに多額の繰越欠損金を有する会社がある場合には、グループの別の会社の所得をその繰越欠損金に充当することにより、時効による繰越欠損金の切捨てを防止できる可能性があります。
- 子会社に多額の含み損がある場合には、連結納税制度の適用時にその含み損を計上し、その期の法人税額を節税することができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。最後に連結納税のポイントをいかにまとめましたので複数の会社を経営されている方は是非ご検討してみてください。
- 親会社と子会社の所得を通算して計算できる
- 連結納税の適用を受けるためには申請が必要
- 既存のグループが新しく連結納税の適用を受ける場合には注意が必要
RETAX編集部
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