相続税対策

位置指定道路の評価の留意点

相続税申告における土地の評価において、私道の評価は判断に迷う要素が多く含まれています。

国税不服審判所の裁決事例を見ながら、私道の評価について留意点をご紹介します。

●事案の概要
この事案は、もっぱら特定の物の通行のように供されている公共性の低い私道について、その価値をゼロとして相続税評価額を算定し申告したところ、担当国税庁から否認されたケースです。
つまり、私道の評価をゼロ、価値なしとすることについて、利用形態から判断した場合の合理性や妥当性が問われています。

この事案では、相続人は財産評価基本通達ではなく不動産鑑定士による不動産鑑定評価書を根拠として争ったため、次の2つの争点がありました。

  1. 本件評価に当たり、財産評価基本通達の定めにより難い特別な事情があるか
  2. 財産評価基本通達の定めに基づいて算定される私道の評価額はいくらか

尚、問題となった私道はいわゆる位置指定道路で、しかも袋小路になっているものでした。

国税不服審判所の裁決

国税不服審判所はこの事案において、位置指定道路の性格について以下のとおり述べました。

(1)位置指定道路は、道路法の規定(第4条)に準じて、一般の交通を阻害するような方法では私権を行使することができなくなるものの、所有権の移転、抵当権の設定もしくは移転は可能である。
(2)位置指定道路は私道であることから、将来その変更又は廃止の可能性がないわけではない。

その上で、土地について以下のように取り扱うべきものとしました。

①本件土地は位置指定道路であるが、あくまでも私人の所有に属するものとして(県道や市道のような完全な公共物ではない。登記簿上も所有者は個人になっている)、その維持管理は位置指定道路の目的に反しない限り所有者に任され、処分権が所有者にあるため抵当権の設定等は可能である。

これは、この道路について所有者は抵当権の設定等を行うことで借入ができる等、一定の処分が可能であるということを指しています。

②仮に当該私道が無償で取引されていたとしても、少なくとも当該私道の存在がその隣接する土地に利便性等を付与し、その隣接地の財産的価値を増加又は維持するという点で、当該私道は財産的価値を有している。

これは意味が分かりにくいので少しかみ砕きます。
土地は道路に面していない限り、建物の建築はできず宅地としての利用はできません。この私道が実際の取引において価値ゼロとして売買される性格のものであったとしても、この私道が存在しないと無道路地になるような土地Aがある場合、私道の存在によって土地Aは建物の建築ができる宅地の価値を持つことになるのであるから、私道部分に財産的価値が認められるということです。

③本件土地の価額を評価するに当たって、評価通達の定めによることが著しく不適当と認められる特別な事情があるとは認められない。したがって、本件土地の価額は相続税評価額(この事案では宅地価格の30%でした)をもって時価とすることが相当である。

不動産鑑定評価に当たっては、私道は余程特殊な事情がない限り価値ゼロとすることが慣行的に行われています。ただし、鑑定評価では私道の価値はその道に面する土地の価額に吸収されるという考え方を採るのが一般的ですから、一応不動産鑑定評価も国税不服審判所の裁決も、両方理論的には間違っていないという面があります。

私道の価値の考え方

以上のとおり、私道の評価に当たって評価額を根拠づけようとする場合、実はかなり難しい問題をはらんでいるテーマなのです。

「土地価格比準表(住宅新報社)」という本があり、土地評価に当たって比較の一定の基準を示していますが、この本でも位置指定道路であるという理由で減価額を当然100%(つまり価値はゼロ)とする考え方はありません。

土地価格比準表では以下のとおり私道の減価率が示されています。

※私道の価格は、道路の敷地の用に供するために生ずる価値の減少分を、左欄の率の範囲内で当該私道の系統、幅員、建築線の指定の有無等の事情に応じて判断し、当該私道に接する各土地の価格の平均価格を減価して求めるものとする。

上の土地価格比準表の減価率表で、共用私道とは例えば本件事案のような袋小路道路等で、その私道に面する土地の各所有者だけが通行できるとされる道路です。
その一方、準公道的私道とは誰でも、その私道の所有者やその家族等でなくても通行することができ、現実にもほとんど県道や市道等と変わらず自由に通行している道路を言います。

このような裁決が出ていますから、今後も上記の裁決事例のような事案の場合、合理的な理由がない限り財産評価基本通達によらない評価を行う妥当性は無いと国税庁から判断される可能性は高いでしょう。

私道の相続税評価上の留意点

本件の裁決事例から考えると、私道の評価に当たっては私道に価値があるかどうか、その根拠を感覚だけではなく合理的な観点から検討して(例えば土地価格比準表の共用私道なのか、準公道的私道なのか等)、相続税申告のための評価を行う必要があると言えます。

実際、私道の中には個人の宅地内通路から、複数の特定の人だけが通行できるとされている道(共用私道)、不特定多数が自由に通行できる道(準公道的私道)まで様々なものがあり、その形態に応じて認められる価値が異なってきます。一般的には公道的な性格が強くなればなるほど、不特定多数の人が自由に通ることができる性格が強くなればなるほど価値は下がります。

また、建築基準法上の道路の指定があるかどうかも大きなファクターです。実際に道路の形状をしている私道であっても、建築基準法上の道路指定を受けていないとその土地に面して建物の建築はできません。
また、建築基準法上の道路の扱いを受けていれば公共的な性格が強まるとみなされますし、所有者であっても自由に位置の変更や私道の廃止はできなくなりますから、私道の評価額は低くなる傾向があります。

実際に財産評価基本通達に従っても、私道の価額は宅地の価額の30%として評価するのが原則ですが、「その私道が不特定多数の通行の用に供されているときは評価しない(価値ゼロ)」と定められています。

ここから考えると、(あくまで相続税申告の際の評価に限りですが)、建築基準法上の道路の指定を受けていても、「特定の人だけが利用できる私道」であれば、相続税申告の際は宅地価額の30%として評価され、その評価が覆ることは難しいでしょう。

以上から、私道の評価に当たっては現実の利用状況や権利の状態から見て、「不特定多数の人が自由に通行できるのかどうか」が相続税申告の評価に当たっての最大のポイントであると判断されます。